BACKSTAMPS裏印

オールドノリタケの裏印(バックスタンプ・マーク)についてOld Noritake Backstamps

オールドノリタケには、約100種以上の多くの裏印が確認されております。これらの裏印は、オールドノリタケのいわば戸籍であり、オールドノリタケの製造年代を知る上で重要な要因になります。

オールドノリタケを収集する上で、また、オールドノリタケの知識を深める上で必要不可欠な裏印のことについて解説してみたいと思います。

オールドノリタケの裏印

オールドノリタケに裏印がある理由

同じ磁器製品の伊万里焼などは、裏印がないものが多く、裏印のない製品の製造年代を判定するにはそれなりのキャリアと知識が必要になります。対して、オールドノリタケの場合、おおよその製造年代の判定が裏印によって容易に解明でき、他の裏印のない陶磁器製品の骨董品を収集するよりも安心できると言うのも、オールドノリタケの魅力の一つと言えるでしょう。

ところで、オールドノリタケには、なぜこのように多くの裏印が使用されるようになったのでしょうか?それにはやはり理由があります。そこで、それらの理由を考えながら、オールドノリタケの製品の分類に基づいて裏印の紹介を進めてみます。

1)オールドノリタケの販売先による違い
海外輸出向けと国内向けの違い、海外輸出向けの場合は、販売先の国(米国・英国・アジア・オセアニアなど)よって裏印が異なります。
2)オールドノリタケの材質・用途・品質の違い
材質別の場合、一般的な生地である硬質磁器製品とボーンチャイナ製品(軟質磁器製品)の違いで裏印が異なります。用途別の場合、ディナーウエアーとファンシーウエアー(嗜好品)の違いによって裏印が異なります。品質の場合、特に日本陶器発足後、ノリタケブランドを守るため、品質・グレード(高級品・普及品)の違いによっても裏印は使い分けられました。
3)オールドノリタケの製造年代による違い
これらの裏印の中には、各時代によって代わっていったものや、時代とは関係なく長期間使用された裏印があります。
  • 前期製品群(森村組時代)・・・1885年~1903年
  • 中期製品群(日本陶器時代前期)・・・1904年~1921年
  • 後期製品群(日本陶器時代後期)・・・1922年~1945年

また、和食器、電気シェード・森村ドールなどの特別な製品のみに使用された裏印や、白生地製品用裏印(森村組・日本陶器が初期において白色生地を購入していたと同様、絵付けする前の白色生地だけを海外に販売しており、それらに使用した裏印)・チカラマチ印 (1920年代頃に日本陶器主税町[チカラマチ]主張所で絵付けされた製品の裏印で、いわゆる外工場用・または、外注仕入れ品に使用した裏印)など、特別な用途の製品のみに使用された裏印もあります。このように、様々な目的に合わせて多数の裏印が製品に使用されてきました。

それでは、オールドノリタケで主に使用された裏印を紹介いたします。

目次

米国向けの裏印

メープルリーフ印

メープルリーフ印

使用期間
1891年頃~1915年頃(1891年に商標出願・1908年商標登録)
グリーン・ブルー
分類
海外輸出向け(米国向け)、ファンシーウエアー、前期製品群(森村組時代)
印のタイプ
転写3種、スタンプ1種
ノリタケ‐RC印

ノリタケ‐RC印

使用期間
1906年頃~1921年頃(1915?頃)(1906年商標出願・1911年商標登録)
グリーン・ブルー
分類
海外輸出向け(米国向け)、ファンシーウエアー、中期製品群(日本陶器前半期)
印のタイプ
転写

* RCの意味は、Royal Crockery(高級磁器)の意味。

M-Nippon印

M-Nippon印

使用期間
1911年頃~1921年頃 (1911年商標登録)
グリーン・ブルー・ピンク
分類
海外輸出向け(米国向け)、主にファンシーウエアー、中期製品群(日本陶器前半期)
印のタイプ
転写・スタンプ

* 中央のMはモリムラの頭文字、森村家の家紋(下り藤)を逆にし上り藤にしている。
*「NIPPON」の代わりに「MADE IN JAPAN」と記されたタイプも後年使用される。

ライジング サン印

ライジング サン印

使用期間
1912年頃~1921年頃
ブルー・黒
分類
海外輸出向け(米国向け)、ファンシー・ディナーウエアー、中期製品群(日本陶器前半期)
印のタイプ
スタンプ

* チャイルドセットなどの普及品に多く使用されている。

M-Japan印

M-Japan印

使用期間
1921年頃~1941年頃(1921年商標登録)
グリーン・マロン・ブルー・ピンク・藍色
分類
海外輸出向け(米国向け)、ファンシーウエアー・ディナーウエアー、後期製品群(日本陶器前後半期)
印のタイプ
スタンプ・良質転写

* ディナーウエアーにも使用され、表示バリエーションの違いが多い裏印。「Hand Painted」のないもの、「Japan」だけのものもある。

サクラ印

サクラ印

使用期間
1924年頃~1935年頃 (1924年商標登録)
グリーン・マロン・ブルー・ピンク・黒
分類
海外輸出向け(米国向け)、ファンシーウエアー、後期製品群(日本陶器前後半期)
印のタイプ
スタンプ

* 主にアールデコ風デザインの製品に使用され、M-Japan印との比較に、製品の等級差や工場の違いなどが考えられる。
* 原産地国の表示が「Japan」だけのものもある。

月桂樹-M印

月桂樹-M印

使用期間
1933年頃~1953年(1953年まで使用)
多色・金
分類
海外輸出向け・国内向け、ディナーウエアー、後期製品群(日本陶器後半期)
印のタイプ
良質転写

* 主に米国輸出向けディナーウエアーに使用、デザインのパターン名とのコンビネーションされたものが多い。
* 上り藤をリボン付きの月桂樹に変更。

英国向けの裏印

初期マルキ印

初期マルキ印

使用期間
1900年年頃~1910年頃
グリーン・ブルー
分類
海外輸出向け(英国向け)、ファンシーウエアー、前期製品群(森村組時代)
印のタイプ
転写

* マルキは、困難の困と言う文字を図案化したもの、中心に描いた槍で困難を打ち破り、物事が円満に収まるよう角を丸にしたと言われている。スパイダーマークとも言う。
* 下に「MADE IN JAPAN」のついたものもある。

マルキ印 英国登録

マルキ印 英国登録

使用期間
1906年頃~1925年頃(1905年商標出願・1908年商標登録 登録人ローゼンフィルド氏)
グリーン・ブルー
分類
海外輸出向け(英国向け)、ファンシーウエアー、中期製品群(日本陶器前半期)
印のタイプ
転写・スタンプ
マルキ印 日本登録

マルキ印 日本登録

使用期間
1910年頃~1941年頃(1911年商標登録 登録人森村開作氏)
グリーン・マロン・ブルー・藍・金(ピンクは戦後の製品のみ)
分類
海外輸出向け(英国向け)、ファンシーウエアー、中・後期製品群(日本陶器前・後半期)
印のタイプ
スタンプ・良質転写?

* マルキ印英国との違いは、「MADE IN JAPAN」の原産地国の表示の間にスペースがある。「Noritake」の「K」が違う。

日本・アジア・オセアニア向けの裏印

ヤジロベー印

ヤジロベー印

使用期間
1911年頃~1940年頃(裏印と共に昭和15年4.13の年号が押された記念品あり)
グリーン・マロン・ブルー・ピンク・藍・金
分類
国内向け、ファンシーウエアー・ディナーウエアー、中期・後期製品群 (日本陶器前・後半期)
印のタイプ
スタンプ・良質転写

* ヤジロベーは、バランスのとれたけ経営を意味したもの。
* 漢字の「日本陶器会社」や「Nippon Toki Kaisha」のないバリエーションもある。
* この裏印の前に、通称:初期ヤジロベー印があり、漢字の「日本陶器会社」・「Nippon Toki Kaisha」などがなく、ヤジロベーの形もすこし異なる、また、この印に対し転写印である。

月桂樹-RC印

月桂樹-RC印

使用期間
1914年頃~1950年頃 (1914年商標出願 1926年商標登録 登録人ダーベー氏)
グリーン・マロン・ブルー
分類
海外輸出向け(インド・インドネシア)・国内向け、ファンシーウエアー・ディナーウエアー、中期・後期製品群(日本陶器前・後半期)
印のタイプ
スタンプ

* MADE IN JAPAN」・「JAPAN」がついたものものもある。

月桂樹-日陶印

月桂樹-日陶印

使用期間
1933年頃~1943年頃
多色・グリーン・マロン・藍
分類
国内向け、ファンシーウエアー・ディナーウエアー、後期製品群(日本陶器後半期)
印のタイプ
良質転写